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イコノロジー(図像学) 十二使徒

トマス Thomas

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聖トマス

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 「聖トマス」

トマスはディディモ(Didymos 双子)と呼ばれました。一般に若く髭がない人物として描かれます。トマスは非常に疑り深い人物でした。この事は「トマスの不信」や「トマスの懐疑」と呼ばれしばしば絵画の主題にもなっています。トマスはキリストが生き返ったという事を他の使徒たちから聞かされましたが、自分はその場に居合わせなかったため、一人キリストの復活を信じようとせずにいました。そこに磔刑後のキリストが現れ、蘇った事をトマスに示します。

「ヨハネによる福音書」20:19
十二人の一人でディディモと呼ばれるトマスは、イエスが来られたとき、彼らと一緒にいなかった。そこで、ほかの弟子たちが、「わたしたちは主を見た」というと、トマスは言った。「あの方の手に釘の跡を見、この指を釘跡に入れてみなければ、また、この手をそのわき腹に入れてみなければ、わたしは決して信じない。」さて八日の後、弟子たちはまた家の中におり、トマスも一緒にいた。戸にはみな鍵がかけてあったのに、イエスが来て真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言われた。それから、トマスに言われた。「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。また、あなたの手を伸ばし、わたしのわき腹に入れなさい。信じない者ではなく、信じる者になりなさい。」トマスは答えて、「わたしの主、わたしの神よ」と言った。イエスはトマスに言われた。「わたしを見たから信じたのか。見ないのに信じる人は、幸いである。」

この話は姿の見えない神への信仰を教えるものとして、好んで宗教画の主題に取り上げられました。

しかし、トマスの疑り深さはこれだけでは済みません。外典によると、聖母マリアの復活の時にも、やはりトマスはその復活を信じませんでした。聖母マリアの死後、マリアの魂は肉体を離れ、キリストの腕に抱かれて天に昇ります。その三日後、使徒たちが聖母の墓を囲んでいた時、聖母の魂が大天使ミカエルと共に下ってきて体に戻りました。そして聖母の魂と体は再び天使たちに連れられ昇天します。トマスはやはりこの場に居合わせなかったのです。そして懲りずにマリアの復活を信じようとしませんでした。トマスが昇天の証拠を求めると、聖母の腰帯が落ちてきたのでトマスは聖母が昇天した事を知ります。

トマスのアトリビュートは

●腰帯
●槍、もしくは短剣
●大工の道具としての定規、または三角定規

です。大工として描かれることは、「トマス行伝」におけるインドへの伝道旅行の時の話からきます。トマスは異教を信じる王グンダフォロスに宮殿の設計と建築を命じられます。しかし、王が留守の間にトマスはその資金を貧しい人々に分け与えてしまいます。トマスは王に「宮殿は死ぬまで見られぬだろう、なぜならそれは天国に建てられたのだから」と言い、王は激怒します。しかし、王の弟が生き返り、トマスの言葉が真実であると確かめられると、グンダフォロスはキリスト教に改宗します。

トマスは異教徒のインド人祭司の命令を受けた4人の兵士によって槍で突き刺されて死にました。







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