絵の具の表面が乾いたら続きを描きます。
いよいよ筆を使っての描画です。
筆は主に豚毛を使いました。
筆を使って木炭の陰にランプブラックを乗せます。
この段階で輪郭を取り直しながら描き進めます。
明るい部分はランプブラックにシルバーホワイトとローアンバーを混ぜた色で起こします。
明るい部分は木炭のゴツゴツした表面を表現するために、
ナイフでわざと雑に絵の具を乗せます。
●筆について
筆も絵を左右する重要なポイントです。
メジャーな筆は豚毛の筆です。
コシがあって粘りのある油絵の具にも負けずに描画ができます。
ただ、繊細な絵を描く時には豚毛では表現できない事があります。
最高級のコリンスキーの毛は柔らかく絵の具の含みも良いようですが、
非常に高いのでもったいなくて使えません。
筆は消耗品なので、中位の作品以上なら絵1枚につき2~3本は
買い換える位の気持ちでもったいぶらずに使いましょう。
柔らかいものなら馬毛やイタチ毛やセーブルなど、筆はたくさんあるので色々使ってみるしかありません。
細い線を描く時には日本画の面相筆がオススメです。
物を立体的に描くためには陰影が重要です。
描き込む段階では左上手前から光が差し込むという事を意識しましょう。
床も木目を意識しながらいくつかの色を使って描きます。
一通り絵の具を置いたら今日の作業は終了です。
前回までのが乾けばもう仕上げになります。
実際の制作期間は5日程でした。
前回の段階まで進めたら、後は細かい部分の修正と描き込みになります。
木炭は複雑な表面をしているので、丁寧に描き込みますが細部にこだわりすぎて
全体の陰影を壊さないように注意しましょう。
木炭は黒ですが、光の当たる部分は思っているよりもかなり明るくなります。
全体の陰影に矛盾が出ない程度に、木炭側面の陰になる部分にも明るい場所を見つけ出します。
下になっている木炭は、ろうそくより左はかなり暗くなります。
逆にろうそくの右側はほとんど黒ではない位に明るく起こしました。
上の木炭の影を落とすことで上の木炭と床の間の空間が見えてきます。
ろうそくは全体の立体感を損なわないように、まずは図柄は無視して白い円柱を描きました。
その絵の具が乾いてから図柄を描き加えます。
柄もろうそくの円柱に沿っている事を意識して、浮いてしまわないように注意します。
陰の部分の柄は一緒に暗くしましょう。
ろうそく皿は鉄なので、ハイライト(白い部分)と皿の色を極端に分けます。
下地が青だったため、木炭よりも冷たい色になっているのが感じられると思います。
使っている黒の絵の具は同じランプブラックです。
アイボリーブラックはカビが生えやすいという問題があるので普段は使用を避けています。
光が当たる部分も白くハイライトが入りますが、
光の反対側にも明るい部分ができます。
これは反射光といって、周りの物が光を反射させるためにできる色です。
この反射光をハイライトよりは鈍い色で描くと回り込む形がうまく表現できます。
壁は絵を描く上で非常に難しい部分です。
壁が壁の位置に収まってくれれば良いのですが、
本来の位置よりも前に出てしまうことがしばしばあります。
壁が奥にいくようにここではかなり色を暗く落としています。
床は木目を追うのも重要ですが、水平な面である事を意識します。
物の影や接地面を丁寧に捉えます。
●仕上げのニスがけ
完成したら半年後にニスをかけてやります。
なぜ半年なのかというと、油絵は表面が乾いていてもその中は完全には乾いていないため、
すぐにニスをかけてしまうと中が乾燥できないままになってしまうのです。
こうなると最悪の場合ガスがたまって絵が黒く変色してしまうことがあります。
油絵の乾燥は水の乾燥とは違います。
水の場合は蒸発することで乾くのですが、
油絵は乾性油が空気中の酸素と結合することで固まります。
この結合には非常に時間がかかるため半年ほど置くということになっています。
実際は2~3ヶ月程でニスがけしても、今のところ私の絵では問題ありません。
ニスがけにはタブローという油を使います。
柔らかい毛の刷毛で均一に塗布します。
仕上がったらニスをかけてあげた方が油絵らしくなるので、
気づいた頃にでもニスをかけてあげましょう。
ホルベイン タブロー 200ml
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以上で油絵の描き方の紹介は終わりです。
わからないことや相談があれば掲示板やメールで気軽に聞いてください。
画材については後日SHOPでオススメのものを紹介するようにしていきます。
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