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油絵の描き方 絵の描き方

油絵の描き方(4)「描画」 - 油絵入門・制作過程紹介

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下描きが終わってフィキサチーフで固定したら、次からはいよいよ油絵の具を乗せていきます。
絵の具はたくさんの種類がありますが、私がよく使う色を紹介します。
メーカーは全てクサカベです。

●赤系

カドミウムレッド
ローズマダー

●青系

コバルトブルー
ウルトラマリン
セルリアンブルー

●黄系

カドミウムイエロー
カドミウムオレンジ
オーレオリン

●緑系

カドミウムグリーン
テールベルト

●茶系

バーントアンバー
ローアンバー
バーントシェンナ
ローシェンナ
イエローオーカー
イエローオーカーライト

●紫系

コバルトバイオレット

●その他

シルバーホワイト
セラミックホワイト(ホルベイン)
アイボリーブラック
ランプブラック

私は無機顔料系の絵具を好んで使っています。
唯一クサカベだけは絵の具のラベルに無機か有機かの表示があります。
無機顔料は一般的に不透明で堅牢な色が多いです。
無機顔料は、絵具の元になっている顔料が鉱物などから取れているため、
着色ではなく顔料自体が持っている色なので色の褪色が少なく、
粒子の大きさから不透明なものが多い傾向にあります。
有機顔料は植物などから取れた染料を体質顔料という無色の粒子に染め込んで作っている色が多く、
褪色があり粒子径が小さいので透明な色が多いのです。
人工的に合成した色も有機顔料です。
透明の絵具はグレーズという技法で下の色を生かした表現には向いています。
最近では変色しない有機顔料も開発されています。

余談ですが、無機顔料は鉛やカドミウムのような有害物質を使っており、
環境問題が深刻な現代では生産中止に追い込まれる傾向にあります。
ヒ素を使った絵具もありましたが、それは既に生産中止になっています。
科学の発達で無機顔料に近い色を人工的に作れるようになったと言われています。
しかし、混色の都合などで合成した絵具が本当に既存の絵具と同じ役割を果たす事はできないと思います。
有機顔料のメリットは鮮やかな色が多いこと、安いこと、安全なことなどがあります。
他にも少量の混色で色味を出せるというのもありますが、
これは裏を返せば混色の時に他の色を食ってしまうということでもあります。


多くの人は描き出しは絵の具をテレピンで薄めておつゆ描きというのをします。
今回は重厚な画面を作るためにも、ペインティングナイフで一気に絵の具を乗せる事にしました。

●ナイフの使い方

ナイフの使い方は、パレットに絵の具を出して何度かパレット上で練れば、
あとはそれをナイフですくって塗りつけるだけという簡単なものです。
筆よりも絵の具の厚みを作りやすいので下描き段階の大きな作業では役に立ちます。
私の場合は完成に近づくにつれて絵が硬くなる傾向があります。
そうならないように、最初はナイフで下描きをある程度無視して自由に乗せます。

木炭は黒いのですが、まだこの段階では黒を置きません。
上に塗る色の深みを出すために木炭の部分にはカドミウムレッドを乗せました。
ろうそく皿には木炭の赤とは逆にコバルトブルーを乗せました。
木炭の黒には温かみを、ろうそく皿は鉄なので冷たさを出すためです。
床はイエローオーカーとローシェンナの混色です。
壁はローシェンナやバーントアンバーなどを混色しています。

●溶き油について

油絵にはたくさんの溶き油があります。
この溶き油は絵の段階によって使い分けましょう。
絵の具はそのままだと硬くて塗りにくいと思います。
その時に溶き油を使って調節してあげます。

最初はテレピンだけで描きます。
テレピンは揮発性油と言って、乾きの早い油です。
描き出しではこのテレピンを使って素早く色を乗せるとやり易くなります。

しかし、ずっとテレピンだけで溶いていると、いつまで経っても油絵の重厚な画面ができません。
一通り色を置いたら、次からはペインティングオイルを使いましょう。
このペインティングオイルは油絵らしい艶のある重厚な画面を作ります。
ペインティングオイルというのは、先のテレピンに乾性油のリンシードオイル、
そして少量のニスと乾燥剤をあらかじめ調合した油です。
乾性油とは文字通り乾いて固まる油です。
揮発油は揮発してしまうので油のないさらっとした画面になりますが、
乾性油はその場で固まるので油絵らしい艶を残してくれます。
油絵が水彩画などと違う重厚な画面になるのは、この乾性油の効果です。
慣れてくると自分なりの画面を作るために調合したくなりますが、
基本的には市販のペインティングオイルが最適な比率の調合油なので
そのまま使っても問題はありません。
最初は市販のペインティングオイルに1割程度テレピンを加えて使用します。
ある程度全体を描いたらそのままのペインティングオイルで描きます。
仕上げの時はこれにリンシードオイルなどの乾性油を加えて艶を出します。

ペインティンオイルにも種類があります。
普通のペインティングオイルは乾性油がリンシードですが、
スタンドオイルやコーパルを使ったものもあります。
スタンドオイルは古典技法向けで、完成後の変色が少ないのが特徴です。
コーパルも古典向けで、強力な艶と堅牢な画面を作りますが、変色が激しいのが難点です。
他にも様々な油があるので慣れたら試してみるのも面白いと思います。
私は乾性油をスタンドオイル、揮発油をテレピン、乾燥剤をハーレムシッカチーフ、ワニスをダンマル
にして描き出し用、中描き用、仕上げ用の3種類の調合油を作っています。

ここまで描いたら今日は終わりです。
このまま絵の具が乾くまで待ちます。







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